『つかこうへいを読む旅』第8弾
「熱海殺人事件/新・熱海殺人事件」(つかこうへい著)が公開されました。
『熱海殺人事件』は1973年の初演以降、幾度となく上演と改稿を重ねながら、日本現代演劇を象徴する作品として立ち上がり続けてきました。
警察署の一室という極めて限定された空間で繰り広げられるのは、事件捜査を装った、愛と暴力、差別と欲望が剥き出しになる人間の闘争です。
そして『新・熱海殺人事件』では、時代の変化を受け止めながら、人物造形や関係性が更新され、同じ物語でありながらまったく異なる顔を見せます。
そこにあるのは「正義」や「成長」といった言葉の空虚さと、人間が抱え続ける矛盾や弱さを、容赦なく突きつけるつかこうへいの視線です。
本作は単なる犯罪劇ではなく、権力と服従、愛されたいという渇望、そして言葉によって他者を支配し、また救おうとする人間の姿を描いた“人間劇”です。
怒号のような台詞の奥に潜む孤独と絶望は、時代を越えて観る者の胸に突き刺さります。
『熱海殺人事件』と『新・熱海殺人事件』を読み比べることで見えてくるのは、つかこうへい自身が時代と格闘し続けてきた痕跡であり、「演劇は更新され続けなければならない」という強烈な思想です。
『つかこうへいを読む旅』第8弾では、この二作を通して、つかこうへいが描き続けた人間の醜さと愛しさ、その両極を読み解いていきます。



