#8「熱海殺人事件」「新・熱海殺人事件」(つかこうへい 著)

紹介:宮原奨伍 聞き手:広山詞葉 

宮原奨伍(以下、宮原):それでは第8回目です。よろしくお願いします。

広山詞葉(以下、広山):よろしくお願いします!

宮原:今回ご紹介するのは、『熱海殺人事件』と『新・熱海殺人事件』です。『熱海殺人事件』は1973年に出版された作品で、『新・熱海殺人事件』は1990年に出版されていますね。

広山:『熱海殺人事件』は、文学座さんに書き下ろされたものですよね?

宮原:そうですね。『新・熱海殺人事件』は、つかこうへいさんがつかこうへい事務所を解散して、一度演劇から距離を置いた後に書かれた作品です。事務所を解散したのが1982年なので、その後、活動を再開されてからの途中で発表されています。

広山:何が違うんですか?

宮原:今回公演するにあたって、「どのバージョンの熱海殺人事件をやるんですか?」とよく聞かれるんですよね。

広山:私自身も、とても興味深いです。

宮原:そうですよね。初稿は文学座さんの公演のために書き下ろされたもので、物語としてとても分かりやすいんですよね。

広山:私も初稿の『熱海殺人事件』を読ませていただいて、ストーリーがすっと入ってきました。

宮原:そうなんですよね。ただ、オープニングで部長が受話器を片手に怒鳴っているシーンがなかったり、大山金太郎の浜辺のシーンも違う描かれ方をしていたりするんです。

広山:全体的にシンプルに感じました。

宮原:なので、僕としては初稿をベースにやりたいと思っているんですが、エンターテインメント性やテンポ感、勢いといった、僕が憧れる“つかこうへいさんの芝居”として、どう噛み合うのかは、今でも本当に考え続けています。

広山:そうですね。

宮原:この二つの大きな違いの一つが、登場人物の名前ですよね。片桐ハナ子が、水野朋子に変わっています。

広山:設定も違うんですか?

宮原:設定も少しずつ変わっていますね。それから、山口アイ子が殺される原因が「コケ女」だったという点です。売春をしていて、大山金太郎が千円札を差し出してしまったことが大きな引き金になっている、という描写があるんですが、それが書かれているのが『新・熱海殺人事件』です。

広山:それは初稿の『熱海殺人事件』には書かれていないですよね。

宮原:そうなんです。なぜそのように書き換えられたのか、僕自身もはっきりとは分かりません。ただ、「つかこうへいを知る旅」として、みなさんにも一緒に考えながら知ってもらえたらいいなと思っています。

広山:そもそも、『熱海殺人事件』ってどういう話なのかのご説明をお願いします(笑)

宮原:三面記事にもならないような小さな事件を、木村伝兵衛たちが、いかに社会的価値を見出し、大きな事件として仕立て上げていくか、という物語です。

広山:面白いですよね。

宮原:そうですね。

広山:そのストーリーが一番よく分かるのが、初稿だなと思います。なので、本として読むのであれば、初稿の方が読みやすくておすすめだと思います。

宮原:同感ですね。演劇ファンの方も、つかさんを知らない方も、まずは初稿の『熱海殺人事件』を読んでみてほしいです。

広山:そうですね。

宮原:それから、『熱海殺人事件』をやってみたい役者の方も多いと思うんですが、その際に、両方を読んで考えてみる、というのもいいと思います。

広山:読み比べるの、楽しいと思います。

宮原:はい。今回は『熱海殺人事件』と『新・熱海殺人事件』をご紹介しました。

広山:ありがとうございました!

宮原:ありがとうございました!